ヨーロッパのAIセキュリティ、言語ギャップで穴が開く | 2026年7月25日
2026年7月25日のセキュリティニュースをお届けします。
トークスクリプト
東京セキュリティブリーフィング 2026年07月25日(土曜日)
オープニング
こんにちは。東京セキュリティブリーフィングへようこそ。本日の放送は2026年07月25日(土曜日)です。昨日までに報道されたセキュリティ関連のニュースをお届けします。本日は、AIプラットフォームを悪用した新たな脅威から、大規模なランサムウェア活動、そして重要なインフラを標的とした高度な攻撃まで、様々なテーマをお取り上げします。ぜひ最後までお付き合いください。
ヘッドライン
本日のヘッドラインです。複数のメディアで報道されている大きなテーマとしては、以下のようなものが挙げられます:ロシア系脅威グループによる未修正サーバーを狙ったメール窃取攻撃、ランサムウェア集団による大規模なデータ窃取キャンペーン、AIプラットフォームの脆弱性を悪用した新たな詐欺手法、データ漏洩件数の急増、そして医療やエネルギーセクターを含む重要セクターへの影響です。これら複数のニュースが同時に報道されていることから、セキュリティ脅威の多様性と深刻性が浮かび上がっています。
詳細解説
ヨーロッパのAIセキュリティ、言語ギャップで穴が開く
まず注目したいのが、AIセキュリティの言語依存性についてです。ヨーロッパの多くの国で異なる言語が使用されていますが、AIセキュリティ層が全言語で等しく機能していないという報告があります。英語以外ではジェイルブレイクやプロンプトインジェクション攻撃への保護が不十分だということです。ヨーロッパは24の公用語を持つ多言語地域ですが、この言語ギャップに起因するセキュリティリスクが特に高いと指摘されています。これは、多国籍企業やユーザーがAIツールを利用する際に注意が必要な点です。
Zimbra脆弱性がメール盗聴の武器に
次に、重大なメール侵害の事例についてです。ロシア系脅威グループがZimbra Collaboration Suiteの脆弱性CVE-2025-66376を悪用し、西側政府・企業を標的とした攻撃を展開しています。この攻撃は2025年7月から確認されており、メール表示だけで感染するゼロクリック型の攻撃になります。攻撃が成功すると、過去90日分のメール、アドレス帳、そして2FAトークンまでが盗まれます。この攻撃グループは「Laundry Bear」またはVoid Blizzard(ボイド・ブリザード)と呼ばれており、複数国による共同警告が発表されています。特に未修正のZimbraサーバーが継続的に標的になっているため、メールシステムの管理者には緊急のパッチ適用が必要です。
OpenAI ChatGPTの脆弱性、不可視エージェント作成が可能に
OpenAIのChatGPT Agentに関連する脆弱性が明らかになりました。この脆弱性はZenity Labsが発見し、「AgentForger」と名付けられています。CSRF脆弱性により、フィッシングメール内のリンクをユーザーが一度クリックするだけで、ChatGPT Workspace内に強力な不可視エージェントが自動的に作成されてしまいます。この不可視エージェントは攻撃者がメール指示でリモート制御でき、ビジネスメール詐欺やデータ窃取に利用される恐れがあります。OpenAIはすでにこの脆弱性に対応しており、パッチが適用されていますが、この種の攻撃手法の登場は、AIプラットフォームがセキュリティ脅威の新たな材料になっていることを示しています。
SectopRAT、偽Claudeアプリに隠蔽されて配布
Bing検索の広告経由で、偽のClaude Desktopアプリケーションが配布され、SectopRATというマルウェアが拡散していました。この攻撃キャンペーンでは、被害者が正規のAnthropic提供ドメイン「claude.ai」にリダイレクトされます。悪意あるArtefactがこのドメイン内に隠蔽されており、被害者は正規のウェブサイトにアクセスしているつもりで感染してしまいます。2026年7月21日から22日にかけての観測では、少なくとも29の組織が侵害されており、マルウェアは削除までに7,000回以上閲覧されました。SectopRATは高度なマルウェアで、パスワード、クレジットカード情報、Cookie、社内ファイルへの深い持続的なアクセスを提供し、リモートアクセス機能も備えています。
Cl0p、PTC製品のゼロデイ悪用で世界規模のデータ窃取
Cl0pランサムウェア集団がPTC Windchillおよびそれに関連するFlexPLM製品の脆弱性を悪用した大規模なキャンペーンを展開しています。悪用されている脆弱性はCVE-2026-12569で、CVSS評価は9.8の最高度の深刻さです。攻撃者は認証なしでリモートコード実行を実現し、JSP Webシェルを展開してシステムに侵入しています。さらに、FlexPLMの別の脆弱性であるWSDL情報漏えいの欠陥と連鎖させた多段階攻撃により、エンジニアリング・設計データを窃取しています。標的セクターは航空宇宙、防衛、自動車、製造業など、機密性の高い製品開発に関わる企業です。攻撃グループは「support@cryptohox.com」から恐喝メールを送信してデータ売却を脅迫しており、インターネットに公開されたWindchillサーバーが特に危険な状態にあります。
ランサムウェア活動、下半期に60%増加
2026年上半期のランサムウェアレポートが報告されています。2025年4月から2026年3月にかけて、新規に参入したランサムウェア集団は61グループで、6月末時点で活動中のグループは146に上ります。被害報告件数は7,551件で、特に下半期に60%増加しています。地域別では米国が全体の49.3%を占め、ヨーロッパとアジアでは増加傾向が見られています。同時に、別の報告では、ランサムウェア攻撃で身代金を支払った企業の37%が、その後も再び恐喝されているというデータがあります。さらに、支払った企業全体の54%が身代金を払っており、その中でも2%は支払ったにもかかわらず復旧ができなかったということです。ランサムウェアの脅威は継続しており、特に医療セクターでは注目すべき動きがあります。ランサムウェア集団がEMEA地域の医療サプライチェーン、つまり病院、診断機関、薬局を標的にしており、Qilinやロックビット3.0などの集団が活動しています。実例として、アメリカン・ホスピタル・ドバイの4億5,000万件の患者記録流出が報告されています。
2026年上半期、データ漏洩件数が急増
2026年上半期のデータ漏洩統計では、報告件数は1,803件で、被害通知件数は4億7,100万件に達しています。その中でも最大級の被害者は学習管理システムのInstructure Canvasで、2億7,500万件の被害が報告されています。また、Under Armourからは7,270万件の漏洩があります。医療セクター固有の問題として、医療関連の漏洩件数は281件で、前年の270件から若干増加しています。テネシー州の病理検査グループ「Anatomic and Clinical Laboratory Associates」では、169,626人の患者データが流出しており、氏名、生年月日、社会保障番号、医療情報などが含まれています。オーストラリアのOrigin Energyは、顧客480万人のうち一部の個人情報、具体的には氏名、住所、生年月日、電話番号、アカウント情報が流出しました。部分的なクレジットカード番号と銀行口座番号も確認されており、ハッカー「John Doe」が200万人分のデータを保有していると主張し、2週間以内に流出予告していました。さらに、バチカンの公式祈祷アプリ「Click to Pray」では、Webサイトに安全でない直接オブジェクト参照(IDOR)脆弱性が発見され、70万件以上のユーザーの氏名とメールアドレスが認証なしで閲覧可能な状態にあったと報告されています。
ホテルWi-Fiを悪用したMicrosoft 365認証情報窃取
ホテルや会議施設のWi-Fiゲートウェイを侵害し、DNSポイズニングを使用してMicrosoft 365の認証情報を窃取するキャンペーンが複数国で確認されています。米国内の複数都市、インド、サウジアラビアで被害が報告されており、フィッシングメールや添付ファイルは不要な巧妙な手法です。この攻撃は出張中の企業従業員を標的としており、APT28(Fancy Bear/Forest Blizzard)に属性付けられる可能性も指摘されています。防御対策としては、VPN常時接続やデバイスコード認証フロー無効化が推奨されています。
Chick-fil-Aの13,000件を超えるクレデンシャルスタッフィング攻撃
チック・フィレ・Aは6月17日から19日にかけて、自社ウェブサイトとモバイルアプリを標的とした複数のクレデンシャルスタッフィング攻撃を検知しました。Chick-fil-A Oneロイヤルティプログラムのアカウントが攻撃対象になり、攻撃者は自動化ツールとサードパーティから入手した認証情報を使用して不正アクセスしています。被害規模はメイン州への届出では13,322人が影響を受けており、氏名、メールアドレス、メンバーシップ番号、クレジットカード情報下4桁、決済番号などが流出しました。
Snapchatユーザーを狙ったフィッシング詐欺で禁錮判決
イリノイ州の27歳男性カイル・スバラは、2020年5月から2021年2月にかけてSnapchatユーザー4,500人以上を対象とした組織的なフィッシング詐欺を実行した罪で禁錮76カ月の判決を受けました。攻撃者は約570人からワンタイムアクセスコードを詐取して少なくとも59件のアカウント侵害に成功し、ヌード写真をダウンロード・販売・交換していました。盗まれた素材の一部はアンダーグラウンドフォーラムで売買されており、児童性的虐待コンテンツが含まれていたケースも確認されています。
Chrome 150アップデート、4件の深刻度「高」脆弱性を修正
GoogleはChrome バージョン150.0.7871.186へのアップデートで、深刻度「高」のメモリ安全性脆弱性4件を修正しました。CVE-2026-16807(Codecs 境界外書き込み)、CVE-2026-16806(WebMCP 解放後使用)、CVE-2026-16805(Blink 解放後使用)、CVE-2026-16804(Input 解放後使用)が含まれています。Googleは実際の悪用は未確認としていますが、詳細情報公開を制限し、リスクの高さを強調しています。
Linux XFSファイルシステムのRoot権限昇格脆弱性
LinuxカーネルのXFSファイルシステムに「RefluXFS」と名付けられた脆弱性が発見されました。CVE-2026-64600として登録されています。Reflinkファイルの競合状態によるroot権限奪取が可能で、カーネル4.11以降が影響を受けます。CVSS評価は7.8の「高」です。Qualysの推計では、1,640万台以上の企業導入環境が潜在的に影響を受けると見られています。SELinuxがEnforcingモードで稼働している場合でも侵害が成立する可能性があります。
Notepad++プラグインを悪用したマルウェア配布チェーン
UAC-0099による攻撃では、複雑なマルウェア配布チェーンが明らかになっています。フィッシングメール内の画像クリック、URL短縮サービス、VBSスクリプト、Notepad++ 8.8.3、悪意あるプラグイン「NppExport.dll」へと進む多段階の流れです。最終的には、LunchPoke、BurnyBear、MatchBoil V2といったツールが導入されます。
136件の悪意あるRuby Gemsがマイナー配布
Ruby Gemsリポジトリで136件の悪意あるパッケージが発見されました。これらは「Prvaz12_mars」による113件と「monib110」による23件で構成されています。これらのパッケージはXMRigマイナーを配布しており、5時間遅延実行、サンドボックス検知、複数言語対応、SSH自動増殖機能を備えています。
Next.jsの複数セキュリティ脆弱性
Next.js に9件のセキュリティ脆弱性が発見されました。CVE-2026-64645(SSRF)、CVE-2026-64649(Server Actions でのSSRF)、CVE-2026-64642(ミドルウェア認可バイパス)などが含まれています。バージョン15.5.21および16.2.11で修正されています。
Oracleが過去最多1,449件のセキュリティパッチをリリース
Oracleが過去最多となる1,449件のセキュリティパッチをリリースしました。これはAI活用による脅威検出強化を反映したものです。外部研究者からのクレジットは64件のみで、大半は社内発見のパッチになっています。このパッチ数の増加は、管理者への運用負荷が増大していることを示しています。
Microsoft 365サービス障害、複数コンポーネント影響
7月23日にTeams、SharePoint、Excelで大規模なサービス障害が発生しました。Downdetectorへの報告件数は2,403件で、通常の29件と比較して極めて高い数値です。障害内容としては、SharePointが78%、Excelが11%を占めています。
クロージング
本日は、AIプラットフォームの言語依存的なセキュリティ脆弱性から始まり、重要なメールシステムの侵害、ランサムウェアの猛威、そして大規模なデータ漏洩事例まで、多岐にわたるセキュリティ脅威をお伝えしました。注目すべき点は、これらの脅威の多くが組織の重要なシステムや機密情報を狙っており、適切なパッチ適用と認証強化が急務であるということです。特に、Zimbra脆弱性やPTC製品のゼロデイ、そしてホテルWi-Fiを経由した認証情報窃取など、従来の防御体制では検知しにくい新たな攻撃手法が登場しています。
ご自身やご所属の組織が、これらのセキュリティ脅威にさらされていないか、ぜひこの機会に確認していただきたいと思います。特に、メールシステムの運用状況、VPN設定、Wi-Fi環境のセキュリティ、そしてクラウドサービスの認証設定などは、今一度見直す価値があります。気になるニュースや詳細な対策情報があれば、ぜひご確認ください。
東京セキュリティブリーフィングでした。また次回お会いしましょう。